養成ギプス

それからどーした?
んふふ・・・今思い出しますね。\r

名実ともに「太っ腹」の所長のお陰で
一日は思う存分練習させていただきましたが\r
その後は毎日が雑用続きでございました。\r

ちょっとした合間に練習する日々が暫く続き
晴れて、入力を許可されたのでございます。\r
めでたし、めでたし!!

おいおい、そーじゃねぇでしょーっ。\r
「養成ギプス」はどーしたのさー。\r

そーでした。\r
さて、本格的な練習というのはいかがなるものか?
CRT、つまりモニタ、ディスプレイのことですね。\r
このブラウン管のコントラストを操作して
真っ暗にするのでございます。\r

其の上で、練習問題の文字を次々に叩いて参りますが
合っていよーが、違っていよーが目で見てもわかりません。\r

一抹ぢゃなくて、死ぬほど不安。\r
そこを辛抱して入力するのでございますよ。\r
ひととおり入力したら、「ベリファイ」というのがあります。\r
全く同じことを初めから入力いたします。\r

前回の入力と異なっていると電子音が鳴るのでございます。\r
「ピッ!」\r
で、もう一度入力します。\r
「ピッ!」\r
これで訂正されます。\r
一日中、このピッ!と格闘するのでございます。

養成ギプス

そ、所長さまへの直訴。\r
世が世であればお家断絶、おとがめは親類縁者まで及びましょう。\r

直訴の内容は、でございます。\r
「練習ができないので、なんとかして欲しい」\r
というものでございます。\r

思えば、新入社員の分際で思い切ったものでございますね。\r
中小企業とはいえ、200人近くの従業員。\r
名古屋の本社におわします「殿」\r
つまり社長のご尊顔を拝すなどということは
年に一度あるかないか、しかも遠目にお見かけするのであって
地方の女性社員と話をするなぞはナイのが常でございます。\r

さて、直訴いたしましたのはよろしいが\r
スケジュール上、練習できない日というのがあります。\r
ひと月のうち「1、2、3、11、12、13、16、17、18、21、22、23」\r
この日は仕事が優先、練習などのためには空けられないのでございます。\r

残りの日から休日を引けば残りは月に僅か数日。\r
これでは永久に上達する日は来ないと予想できましょう。\r

困った所長、ちょっとお考えののち
「ゴールデンウィークに出てくればイイ。」\r
「はい、ありがとうございます。」\r

まる一日、存分に使える日が与えられたのでございます。\r
入社後3か月以内の残業・休日出勤は許可されないのが\r
当時の社則でございました。