長野

指定席に座ったとき、全てを理解した人、しなかった人。
疑問にさえ思わなかった人、さまざまであったことと拝察します。

なにはともあれ、楽しく旅行はスタート致しました。

驚いたのは水と空気でございました。
この世のものとは思えぬ澄み切った梓川に手を入れました。
あまりの冷たさは我をも忘れるほどでございます。

かの地は、昔人にも極楽を思わせたのでございましょうか。
善光寺を訪れる頃には謙虚な心持であったと思い出します。

旅行を終えて広島に戻ってからの課題は作文でございました。
多くがこういった作業を嫌がるはずと思いきや
出来上がった文集は、感激の言葉で綴られておりました。

「新婚旅行は絶対に長野にする!!」

まだいつとも知れぬ、可否も不明のことに
はしゃいでおりましたのは男子生徒の面々なのでございました。

指定席事件の真実とは、お気に入りの人の隣席を確保する
『談合』が男子生徒の間で行われたと聞かされ
驚きと得心とがない混ぜになった、複雑な心境でございました。

どのようにして『落としどころ』を見つけたのか
今もって不思議でなりません。