プロジェクトY 大先生

子供の頃に、かかりつけの医者がございました。\r
その医院は内科と小児科だけで、医師は父と息子。\r
父親の方は大先生(おおせんせい)と呼ばれておいででした。\r

明治の気骨と申しましょうか。\r
そのお人柄は皆から尊敬されておられました。\r

大先生には信念がおありでした。\r
子供の発熱は、三十八度までは注射をしない\r
麻疹などに感染している場合は外へ出させない\r
という二つは、今でも記憶にございます。\r

ある日麻疹に罹って電話を致しましたところ\r
「絶対に外へ出すな、風に当てるな、行くから!!」と仰って
往診して下さいました。\r

その信念には理由がございました。\r

我が子を麻疹で喪っておられたのでございます。\r
医師でありながら救えなかった悔しさを胸に抱き\r
午後は患者のところへ回る日々でございました。\r

そして年月が過ぎ、大先生は旅立たれました。\r

大先生には幾人かのご子息がおありだったようで
いずれも医師であると聞き及んでおります。\r

それまで一緒に携わってこられた先生は
ひとり郊外に移り、小児科医院を開設されましたが\r
そのいきさつは知る由もないことでございます。\r

わたくしも大人になり、いつか小児科とは
縁遠くなって行ったのでございました。

プロジェクトY

清々しい朝でございますよ。\r
週末の一日、元気で過ごしましょう。\r
行ってらっしゃ〜い!!

・・・どこかのラジオでしたっけ??

ファンの多い某国営放送局の「プロジェクトX」は
テーマソングに助けられて好評ですね。\r

哀愁を帯びた、どこか行進曲風のメロディー。\r
過ぎ去りし過去を思い出させ、郷愁を誘う歌詞。\r
あゝ・・・・。\r

違います、違います!!
本日は歌の解説のつもりではございませ〜ん。\r

「甲状腺ガン」の患者のためにロシアまで出かけた外科医の話。\r
前回分の放送をご覧になった方いらっしゃいますか?

毎日往診を続ける父親の背中を見て育ち
内科と外科という専門こそ違えど
同じような「仁」を懐にした医師になったということですね。\r

で、ひとつ思い出したことがあるのでした。