隣人 一 話せば長い話

ビルの北側に店がありました。\r
二階が住居になっている、昔ながらの風情です。\r

雨戸がいつも一枚だけ開けてあり\r
覗いてみると、ぼんやりと浮かぶショーケースの奥は、暗がりです。\r
商っているのかどうか定かでない、雰囲気でした。\r

ここは街中、下水道完備の環境。\r
それでも毎月半ばになると朝早くから収集車が訪れて
悪臭を撒き散らすのは、ひとえにこの店のせいなのでした。\r

怪しい店は数々あれど
これほど買い物をためらわせるものがありましょうか。\r

この店はあろうことか、「薬局」なのでありました。\r

ある日ここで買い物をする「決意」をしました。\r
痛み止めが急いで必要になったからなのです。\r

こんにちは。\r

といってすぐに後悔しました。\r
応対に出てきた店主は「かなりの」高齢だったのです。\r

商品が賞味期限切れであったら、と咄嗟に恐れを抱いたことを\
ここに告白いたします。