客人

強い風ですね。
雨はときどき降っては止み。
空も迷いがあるのでしょうか。

先ほど洗面所に向かう途中
迷いのないご婦人と出会いました。

階段を上がって直ぐに左に折れ
廊下に足を踏み出すその勢いに
思わず心の中でこんにちわ、と言い
軽い会釈を致しました。

彼女は目の前のわたくしには一瞥もせず
日傘を閉じながら(雨天兼用なのでしょう)
つかつかと化粧室のドアを開け、ふたつあるうちの
ひとつの扉めがけて進みます。

もう一方の扉の中にわたくしも用事があったので
気にしないことにして雑用をこなし
ホッとして鏡の前に立ちましたところ
彼女はすでに鼻歌交じりで梳っております。

手を洗おうとして洗面ボウルの前で腰をかがめながら
通りすがりの人だと確信しました。

おいっ、わらじを抜ぐなら挨拶をしなっ!!

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