栄光

グロリオサ

急(せ)く心をいやが上にも追い立てるやうな、風花舞ふ朝であつた。
身支度を調へるあひだに足先が冷たくなつて
どうしたものかと思案の末に、毛糸で出来た下着を選んだことは

この際内緒にしておきませう。

何事もなかつた。
寒くなゐ、と涼しい顔つきで出勤したものの
外套を持たずに出てきたことを夜になつて後悔した。

玄関には夏の花が飾られてをり
その名はラテン語の「栄光」といふ。