
ゆんべ電気式洗い桶に異変が起きやして。
どれって?
よーく聞いておくんなすった、旦那。
自慢の、桶ふたっつの、ポンコツでさぁ。
1978年の秋に買ってきたって、あれでござんすよ。
おや、生まれる前ですかい。
嘘はいけねぇよ、なんとかの始まりだよ、ご新造さん。
脱水桶が回らねぇんで・・・ちょいと首のほうを動かしたんですがね。
これがピクリともしねぇ。
へい、相方は余裕で。
二回ほど直したって腕に覚えがあったせいか、そいつはアッシにはわからねぇが
日も暮れた頃におっとり刀で様子を見た次第でして。
・・・ひっくりけぇして。
裏っかわを見るってぇと、特に外れたり切れたりしたものはねぇ。
水を入れて洗い物をする桶の側は病んでいねぇ。
絞りの側の肝腎なところに何かあったってことは明白でさぁ。
口にしたくねぇ答えが出てるんで。
とっぷり暮れては居たが、こっちだって途方に暮れてらぁ。
急いで車を牽いて、おたなを訪ねたんで。
