

薔薇園に着くと、店主のおかみさんが閉めかけた扉の手を止め
戸口に立ったままこちらへ声を掛けます。
「見に来たの?」
午後四時半は回っており、閉園まであと三十分。
手入れに余念のない彼女の夫らしき人以外に誰もいない園内の
隅の方で、たき火の煙が立ち上っていました。
入場だけなら無料のここで、初夏に『インザムード』を買っています。
そのことと、花も終わったので剪定の仕方を聞きに来た、と告げると
暖かい店内へ招き入れてくれました。
肥料のやり方、薬剤の散布、切る箇所を教わり
最後に、お願いして苗のある畑へ案内して貰い二鉢買いました。
『春佳』と『オールドタイム』
持ち帰り用に新聞紙でくるんでくれるのを待つ、その店先に
女神が立っていました。
黄昏れ、そして帳が降りてくるのはもうすぐです。
