ごめんなさいよ

午後4時すぎから会社を出て、月を待ちました。

薄曇りでなかなか姿を現さない満月にじれていると
運転席側に人影が近寄ってきます。

夫は窓を開けて
「はい、なんでしょう」

道を聞かれるのはしょっちゅうですが
まさか、ね。

ここは港。

あたい達はよそ者よ。
尋ね人なら他を当たりな。

頭をかきながら話し始めた相手の言い分、いや、お願いは
バッテリーが上がってしまい、繋ぐコードを貸して欲しいという趣旨。

「・・持ってないんですよぉ」
と、これだけの返事しかできませんでした。

だって、大袈裟なお道具は全部カメラの付属品。

(ああ、工具は一切持たずに出てきちまった)
(前もって言ってくれたら、用意しておいたのに)

とっぷり暮れてからJAFがやって来たのでした。