
用が済み、手を洗おうとして洗面台の鏡の前に立ちました。
美女がひとり、鼻をすすりながら、ハンカチを真っ赤になった目元に当てています。
気になって近寄ると、もう片方の指先に透明の丸いものが見えます。
「見るとコワイですよ」
彼女は目をカッと見開き、瞳にそろそろとその丸いものをつけると
瞬きを二〜三度繰り返しました。
洗面台に無造作に置かれた、2つでワンセットのケースは
水分が少し残っています。
「使い捨てなんですよ、このコンタクトレンズ」
「眠るときはそのまま??」
「いえ、はずします」
もう夕方、就業時間が来ようかというときに着けているということは
寝るまでのしばしってことね。
・・・もったいない。
一日に何セットも消費するのだろうか。
「あの・・・・」
と言いかけて、閃光が脳を走って両手を打たせました。
「おおっ、メガネ」
「はい、眼鏡です」
そうだった、今朝は眼鏡をかけていました。
それどころか、毎日のように廊下ですれ違う彼女の眼鏡の縁は臙脂色でした。
ひとしきり笑った二人。
roughね、アタシって!!
