遅れた彼岸

ご承知のように暑い日が続いた夏でした。
盆に花と線香だけで早々に切り上げたのが気になっていて
彼岸の頃にも何かと取り紛れてそのままでした。

父の命日に一日遅れで、今日は墓参り。
朝起きると卵焼きはできていて、お結びを作ればいいだけになっています。

水に線香、のこぎりや花バサミも携えて出かけました。

JR阿賀駅の近くで花を買い、珍しく引き潮でない川を渡って
10分とはかからない小高い山を目指します。

最後に急勾配になるあたりで、二人の口数が減り
ただ歩くことだけに集中する耳元に、風がささやきます。

父と祖父と、父の養父となった大叔父夫婦が共に眠る墓の草をむしり
さらに上って大叔父の弟二人が分家している二基と
隣のこじんまりとしたその親、つまり私からみれば曽祖父の
石のまわりを囲った塀に絡んで生い茂った蔓を刈り取りました。

汗だくの作業は二時間余り。
労をいとわず力仕事をこなしてくれる夫に、心から感謝しながら山を降りました。

子供の頃、町からも人からも離れた場所に来るのが億劫で
墓参りは夏休みの一日を無為にするだけのものでした。

しかし、今となっては人の世の業から解き放たれたそのときは
このような静かなところに居るのが幸せではないかと、しみじみ思うのです。

そのあと三原の佛通寺に寄り、染まり始めた紅葉に心躍らせ帰途に着きました。


近くに停まっていた車に映る楓

ギャラリー

佛通寺