鏡の中

汗の心配をしなくて良くなり
整えては風にあててを繰り返していた朝の作業が楽になった。

顔に塗装する壁はかなりきちんとできあがる。

が、さぁ血色を、と一捌け頬に明るさを作りだしたところで
ちょっと嫌気がさしてそのあとが中途半端になる。

眉が描きにくいのである。

左だけ弓を引き、じっと見る。
施していない側は間抜けて、年寄りじみている。

三度目の成人式にはまだ余裕があるな。
しかし確実に近づいているのだ。

バランスを取る手間、のように思えて
実際は大したことは無いのかも知れないが
とにかく自分はここまでで精根を使い果たすのだろう。

何日かに一度、これを厭って後回しにした結果
妙にしまりの無い顔になってしまうことがある。

その日は、力が出ない。

溌剌とした自分を思い浮かべ、きりりとしまった表情を作り出せれば
さぞ充実した一日になるのだろう、とため息をつく。

こんな時、自身の尻を叩く方法がある。

デパートへ出かけ、新しい色を買い求めるのである。
出かけようか。
陽射しが柔らかくなるのに合わせた、企業の策略に進んでひっかかるために。

二週間ほども、この問いを続けていることが問題なのである。
鏡は答えない。