埋蔵金なるものの噂がこのところ飛び交っている。
どこぞの金庫に眠っているが、株価の暴落で目減りしているだ、というのや
江戸時代の怪しい言い伝えを真に受けて、凝りもせず掘り返しているのや
まあ、大抵は殿方の戯言なのである。

先日、社内でその話題からそれて、あるスタッフの、田舎の知り合いのことに及んだ。

知り合いの名前を私は知らぬので、仮にA氏としておこう。
たぶん50代の分別盛りであると思われる。

何でも萩の旧家の蔵の白壁から小判が出たという。
A氏は島根県に住んでいるが、萩と地理的にそう遠くはないことから
自宅の蔵にも埋め込まれている可能性があると考えた。

女房を始め、母親や妹は「男特有の妄想だ」と決め付け相手にしなかったが
ご本人は納まらず、ついに金属探知機を使って調べることになった。

すると、あちこちでピッ、ピッと反応したということだ。

どこもかしこも鳴るので「さぞや」と心騒いで蔵中をつぶさに見たところ
探知機の音をたどって行った先には
柱や棧に打ち込まれた釘がたんとあった、ということである。