石鎚山より

広島から四国への道のりは、遠い。

フェリーを使って宇品港から松山港というのは昔からお馴染みの移動方法である。
加えて、車でしまなみ海道を走って、尾道市から今治市へ入るのが
愛媛県へ渡る手っ取り早い手段となった。

香川県に行こうとするならば
3つある本州四国連絡橋のうちの倉敷と坂出を結ぶルートがあるし
新幹線で岡山まで行けば、乗り換えた列車で瀬戸大橋経由で高松に着くので
速さに重きを置く場合でも随分と便利になった。
日帰りをしようと思えばなんとかなる、のである。

西瀬戸自動車道からの眺めは、足早に過ぎるには惜しい風光明媚である。
平山画伯ならずとも、記憶にも記録にも留めたいと願うだろう。

来島大橋や多々良大橋は規模にも技術力にも目を見張る。
急ぎでなければ、自転車で渡ることをおすすめする。

さて、霊山と言われる石鎚山である。

石鎚山連峰の一部、西日本最高峰、1,982mの名山はかつて女人禁制であった。
しかし今は、「神様と仏様がいるので、手をたたいて拝んでもたたかなくて拝んでも良い」
とされているところが面白い。
古事記にも記されていると小松市の観光案内にもあったが
山と山が山を産んだというような記述は神話によく出てくる話で
個人的には地震による地殻変動でもあったのかと想像する。

いずれにしても、瀬戸内に雨が少ないのはこの連峰のおかげである。

下谷駅から山頂駅までロープウェイで十分足らずの道中に見たのは
一月前なら如何ばかりかと思われる絶景であった。
駅舎から外に出ると気温は3℃
展望台までは雪を踏みしめてそろそろと登った。

下りの発車時刻が迫っているというので、成就社まではたどり着けなかったが
かなたまで続く山脈は心に染み入る厳しさであった。