路の途中 三

運転をしない者にとっては、スペアタイヤが間に合わせであるのがとても不思議なのだが
タイヤの厚みや重さを考えると、トランクが小さいから無理だと言うのだ。

当初は釘かと思われていたが、タイヤに食い込んでいたのは石のようなものだった。
このままでは高速道路は走れないし、岡山に知り合いは居ない。
幸い、メーカーのサービスセンターが探してくれたメンテナンス可能な店舗で
修理・点検してもらえることになった。

倉敷の技術者が、石を取って裏側からきちんと手当てしてくれたのであった。

こんなときにはゆっくり走ろうと決めて、広島に戻ったのは午後10時を過ぎていた。
翌日の夕方、いつものディーラーで再点検を受けたところ
とてもここではできないような素晴らしい手当てで驚きました、ということであった。

もしタイヤ交換ということになれば実は大変な出費のはずだった
と、知ったのはそのあとのことである。
この車種はタイヤの前輪と後輪は大きさが違うのが装備されていて
ローテーションをして使用することが出来ない。

たかが石ころのために、4本全とっかえするはめになるところであったが
お陰で助かったと胸をなでおろしたのである。

それにつけても、鏃のような石片であった。

路の途中 二

寄り道であっという間に一時間近くを費やし
日の暮れぬうちにと脇道に置いていた車に乗った。

夫が言う、何か音がしないか。

耳を澄ませば、左後ろからかすかな、しかもリズミカルな雑音が聞こえる。
パンクのような気がするな。
あら、停めなくちゃね。

どれくらい走ったか定かではないが、あまり長くはなかったように思う。
トラックが駐車している、広い路肩があった。

降りて、後輪を確かめると案の定タイヤは萎み始めていた。
トランクからジャッキと工具を取り出して、夫は難なくスペアと交換する。

ねぇ、初めてスペアタイヤを見るけど、これって自転車用みたい!!

タイヤの幅が半分ぐらいなのだ。
アルミホイールなしの、黄色い金属がむき出しの姿は全く貧相で情けなかった。

ねぇ、トランクに一本、ちゃんとした『本物』を用意しておけないの。