
東山魁夷画伯のイメージは、かつて碧でした。
女性にしても馬にしても、青や緑と白い影の
静かな絵を真っ先に思い浮かべました。
ある日のこと、テレビで、画伯が描かれた唐招提寺の襖絵を観て迫力に心酔し
いままでの印象は単なる思い込みであったことを知ったのでした。
美術館ではデジタル画像で紹介していましたが
御影堂の本物の襖絵を想って、今も心騒ぐのです。
そして更なる発見をしました。
いいえ、絵はすでに在ったのですから、気づいたというのが正しいですね。
画伯は映りこみがお好きなようで、水辺に木々や月を配した作品が幾つもありました。
あなたは、ご存知でしたでしょうね?
そう、有名な話とわかり己の無知に恥じ入りました。
祖父が坂出市の出身であるとか、画伯が瀬戸大橋のライトグレーを提案したとか
彼の地とのご縁が深いのは伝えられるところです。
しかし橋を臨む海辺に美術館が建てられた何よりの所以は
映りこみ好きの賜物か、と、愚考するのです。

