唐音

 日本海を臨む岩場に、荒波が押し寄せます。
冬は終わろうとしていますが空はまだ、名残惜しいのか曇りがちです。

 ほら。

青が白っぽく変わったでしょう?
山に入る道で、地域の人が駐車場に案内してくれました。

その、親切なことと言ったら。

車を降りて分け入る道は雪解けで泥濘んでいて
足をとられない様に苦労したのですが、甲斐はあったのでした。

ここ山陰本線鎌手駅から近い「水仙の里」では
清々しい香りとともに咲き誇る花が見られます。
帰り際に世話役の一人に声をかけられました。

「あげましたかいのぉ~」

「はい??」
「花、あげましたか」
「いいえ」
「じゃぁ、これを」

そんなやりとりの後、花束をいただきました。
一夜明けて、リビングは芳しい香りに満ちています。