西帰行 

日暮れになって門司港に着いた。\r
海岸線は右手に変わる。\r
オレンジ色の夕陽が海へ帰ろうとしていた。\r

沖の鴎と飛行機乗りはよ・・・。\r
昔の歌を何故か反芻する。\r

『門司港レトロ』の賑わいに後ろ髪を引かれながらも\
廃線になった線路跡の脇を、寺へ向かった。\r

寺へ着いたのは夕闇迫る時刻だった。\r
人影の無いお堂に、明かりが灯っている。\r
入り口は開放してあり、誰でも手を合わせて良いのだ。\r

先客の手向けた線香が二寸ほど燃え残っているその隣へ
二本新しいものを立てた。\r

暫し祈る。\r

思うことは数々あれど、願いはそう多くはない。